28歳 フリーライター 女性 shiohigariさん 神奈川県藤沢市のカラオケ店で本当にあった怖い話
僕はカラオケが好きだ。また、深夜に行く方がもっと好きだ。
なぜなら、あのなんとも言えない発想力が高まる深夜テンションになって、いつもは歌わない曲を歌ったり、くだらないことで笑えたりとストレス発散ができるから。
日々仕事に追われ、深夜に地元の友人と行く週一、二回のカラオケが楽しみだったあの頃。でもあの日以来、アーティストPVでカラオケをすることは控えている。
仕事帰りのお楽しみ
いつも通り仕事を終え、到着は終電前後。次の日が休みだろうが休みじゃなかろうが、カラオケに行きたい時は行きたい。また、経験上深夜が一番声が出る。だから「今日は歌うぞ」という日は好んで深夜に行くようにしている。
「今日も目標94点!」と心に決め、帰りの電車内で歌う曲を選ぶ。機種によるが、カラオケ採点93点94点の壁は厚く、なかなか突破出来ない。どうすれば突破できるだろうと毎回同じことを考え電車に揺られていた。
そんな時に緊急停車のアナウンス。終電間際には良くあるが、「またか・・・」と少々溜息をつきながら友人に連絡。もう着いているとのこと。申し訳ないと思いつつ発車を待った。
踏切音
停車のままなかなか動かない。後にお楽しみが控えている為、尚更遅く感じてしまう。
「踏切・・・非常停止・・・人身・・・横断・・・」等と言っているみたいだが、良く聞こえない。まあ待って30分くらいだろうと思いながら、新しく歌う予定の曲のメロディを聞きこむ。思った通り20分ほどして「お待たせしました」との車内アナウンス。あと数駅だから10分以内に着きますと友人に連絡。
即レスが返ってきた。ただ、その時なぜかカーンカーンと聞き慣れない音がスマホから聞こえた気がしたが、電車内だったので気のせいだと思い、気にしなかった。
ようやく馴染みのカラオケ店に到着、さあ何を歌おうと腕まくり。「遅れたから今日は俺からね!」と友人。いつも僕から歌うのがお決まりだったが仕方がない。
曲のPVが流れてきた。線路の映像だ。順番に歌い、テンションも上がってきた。深く気にしていなかったが、なぜか今日はお互い電車のPVが多い曲を歌っている、気がする。
次も電車のPVだ。青春系のPVだったが、踏切音が鳴っている。何だかやけに長い。
止まらない踏切音
長いなあと思いながら聞いていたが、友人は気にしていないようだ。なかなか始まらないなあと思っていたら、友人も変に思ったようで「機械バグった?心霊現象かよ」と言う。
室内の電話で店員を呼んだが来ないので「直接呼んでくる」と友人。部屋には僕一人。
警報のように鳴り響く踏切音。大音量の為、下げようと音量つまみを回すが効かない。
なんだか怖くなってきた。友人も遅い。音量が大きくなってきた気がする。というか音量が大きくなっている。部屋内に踏切音だけが響く。というか完全に異常だ。
慌てて部屋から出ようとドアに手をかけた途端、勢い良くドアが開いた。だが友人ではなく知らない女性だった。
その時彼女は一言「すいません」と言った。
部屋を間違えたらしい。気付けば踏切音は消えており、ふと目を離した為、女性はいなかった。
後、すぐに友人と店員も部屋に来た。
部屋自体を変えてくれるとのこと、正直気味が悪かった。ドヤ顔をしながらも「良かった・・・」と内心ホッとしたが、実話の怖い話としていつか話そうと、まだ若干の余裕があった。
謝罪
それからは何もなく、普段以上に盛り上がった。最高点はいつも通り92点だった。
簡単に93点以上を出させてくれないカラオケってニクイなぁなんて言いながら、今日も満足して帰路に着く。だらだらとくだらないことを話しながら歩いて帰るのがお決まり。
友人の家の方が近い為、遠回り。いつも通っている道なのに、何だか少し嫌な感じがしたが、深夜テンションになったこともあり、あまり思考回路が働かない。
勢いで「さっき、心霊みたいな女がお前がいない時に来たんだよ、部屋間違えたっぽかったけど、マジで心霊現象かと思った」と友人に話したところ、「俺らしか客いなかったぞ」と友人。そう言った後、友人が笑った。その為、お互いカマをかけた冗談だと理解したようだ。俺は冗談ではなかったのに。
友人の家に到着。「来週もまた来てくれるかな?」とどこかの昼番組の司会者のモノマネをしながら、二人で笑いながら別れる。こんなことで笑えるって幸せだなあと思いながら、僕も帰路につく。
ふと気付いた。目の前が踏切だ。誰もいない。その瞬間、耳元でハッキリ言われた。
「今日は何度もすみませんでした」と。
これは、正真正銘の実話だ。
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