37歳 ライター 女性 まさみさん 岡山県倉敷市で本当にあった怖い話
これは岡山出身の知人が体験した実話です。
知人は基本的に幽霊を信じてないのですが、この心霊体験だけは本物だと真っ青な顔で強調していました。
立ち入りを禁じられた土蔵
知人は岡山の田舎で生まれ育ちました。家族構成は祖父と両親に知人を入れた四人で古風な日本家屋に暮らしていたのです。
祖父は大正生まれの頑固者として有名で、厳格な人柄が周囲に恐れられていました。
そして知人の家には奇妙な決まりがありました。庭の片隅の土蔵に入ってはいけないというのがそれです。
「あそこには鬼が住んでおる。子どもをとって喰らうおそろしい鬼がな」
物心付く前から祖父にさんざん脅されていたので、知人は土蔵に一切近付かなかったそうです。
幼馴染にけしかけられ肝試しをすることに……
小4の時、知人は土蔵で肝試しをすることになりました。
きっかけは幼馴染とした賭けです。この幼馴染は近所で有名な悪ガキで、知人の祖父の教えを真っ向から馬鹿にしていました。
「鬼なんかいるもんか!そんなの信じてんのかよ、小4にもなって恥ずかしいヤツ」
同級生でもある幼馴染にからかわれてむきになり、「じゃあ一緒に確かめに行こうよ」と知人は言ってしまったのです。
もとより土蔵の中はどうなってるのか好奇心はありましたし、幼馴染が一緒なら大丈夫だろうと高を括ったのです。
一歩足を踏み入れた瞬間に異変が起こって
当日、知人と幼馴染は緊張の面持ちで土蔵に向かいました。二人して観音開きの鉄扉を開け、埃っぽい暗闇を踏み込むと、夏の真っ盛りにもかかわらず鳥肌が立ちました。
幼馴染と並んだ奥へ踏み込んだ瞬間、凄まじい轟音が鳴り響きました。蔵の扉が勝手に閉じたのです。
閉じ込められる形となった知人と幼馴染はうろたえ、扉を叩いて助けを求めました。しかし母屋は離れているので誰も気付いてくれません。
すっかり心細くなって涙ぐんだ知人の耳に、はっはっはっと獣じみた息遣いが届きました。
「こんな時にふざけるのはやめろよ!」
「お、俺じゃないって!何もしてねえよ、本当だって信じてくれ!」
知人に怒られた幼馴染が半泣きで弁解します。じゃあ今のは一体……暗闇に顔を巡らし、奥に並んだ木製の格子に気付きました。格子の向こうに黒い影が蹲っています。
座敷牢の老女
失禁しそうな恐怖に苛まれ、ただただ震えて立ち尽くす知人へ、黒い影が静かに語りかけました。
「おいで坊や。お乳をあげましょうね」
格子を掴んだ手は痩せ衰え、ざんばらに乱れた白髪の奥ではぎらぎら目が輝いていました。座敷牢に閉じ込められているのはみすぼらしい老女でした。
二人が戦慄に固まっていると、座敷牢の老婆は皺ばんだ手で格子を掴み、力一杯揺すり立てました。
牢を破って出てこようとしている!
「何をしてるんだ!」
数分後、憤怒の形相の祖父が鉄扉を開け放って子どもたちを救出しました。庭では知人の両親がおろおろしています。
知人と幼馴染が泣きじゃくって今見た光景を話すと、祖父は痛ましげにため息を吐き、土蔵の秘密を教えてくれました。
「この土蔵は大昔に座敷牢として使われとったんじゃ。お前たちが見たのはワシの親父の姉様じゃ。他家に嫁いで男児を産んだが、その子が死んで頭が狂い、しまいには離縁されたんじゃよ」
祖父の言葉に驚いて土蔵内を振り返れば、座敷牢の中はからっぽでした。
以上が知人が体験した実話です。彼が見たのは不幸な老女の幽霊だったのでしょうか?