24歳 フリーライター おちゃんこ鍋さんの心霊体験
高校生の時、私はとても奇妙な体験をしました。
福島県の準進学校に通っていた私は、日々勉強と部活に邁進し、青春を謳歌していました。
クラスメートの転校で
そんな折、クラスメイトの一人が転校することになりました。
いつも教室の片隅で読書をしているような大人しい子で、目立たないけれど聞き上手だから、文化系の男女に人気がありました。
もちろん活発なグループともそれなりに交流があり、雰囲気に似合わずコミュニケーション能力は高かったのだと思います。
私は彼女とはあまり会話をしたことはなく、向こうも特に意識していない様子で、要するにただの知人程度の関係でした。
ある日、私は学校に傘を忘れてしまいました。下校時には雨がやんでいたので、失念していたのです。
家に着き、夕ご飯を食べ始めた頃に再び雨が降り、そこで私は自分のミスに気づきました。まあいいや、明日持ち帰ればいいし、と私は気楽に構え、予習復習に精を出していました。
クラスメートが傘を届けてくれた
そこで、インターフォンが鳴りました。
母親が私を呼びつけました。
「女の子が来ているよ」と。
私はまず驚き、それから胸を躍らせ、しかし最終的には首を傾げました。心当たりがないのです。しかも、こんな時間に。
玄関には、転校を間近に控えた女の子が立っていました。傘を手に持ち、しかし全身は濡れそぼっています。よく見るとその傘は私のでした。
「どうしたの?」
「傘、忘れたでしょ? 届けに来たの」
僕は訝しく思いました。親しくもない彼女が、どうして。
「滅茶苦茶濡れてるけど。寒くない?」
「〇〇くんの傘、使うのは申し訳ないと思って」
「いやいや。差してくればよかったのに」
「いいの。はい。それじゃ、またね」
彼女はそう言ってにっこりと微笑み、雨の降る暗闇の中へと消えていきました。呼び止める暇もなく。
彼女の送別会の後で
翌日は、彼女の送別会でした。ホームルームを延長し、寄せ書きと花束を彼女にプレゼントしました。彼女は泣きながら、けれど笑っていました。昨日と同じような顔で。
送別会が終わり、クラスメイトはそれぞれの部活へと向かいました。私は卓球部だったので、渡り廊下の向こうの第二体育館へと歩いていきました。
転校する彼女は、引っ越しの準備があるとかで、すでに学校を出ていました。明日にはもう、関東のある県へと移動するようです。親しい友人の何人かは、彼女を校門まで見送っていました。
部活はすでに始まっていて、私と、私と同じクラスの部員はウォーミングアップもそこそこに、フットワークに参加しました。
それからいつも通りの厳しいメニューを夢中でこなし、くたくたになりながらも、なんとか乗り切りました。
後片付けの最中に、中学の頃から同じ部活で今もクラスメイトの、仲の良い女子部員と一緒になりました。マネージャーがいないので、ボトルの洗浄は部員がやらなければならないのです。
「昨日さ」
「うん」
「××さんが家に来た」
「え?」
「俺が学校に忘れた傘を届けに来てくれたんだよ。でも、なんか変だよな。別に仲良くもないのに」
彼女は、私を凝視したまま黙りこくっていました。
「なんだよ」
「それ、ほんと?」
「嘘ついてどうすんだって」
「何時?」
「え?」
「何時に来たの?」
「えーと……そうだな、夜八時くらい」
「それ、マジなの?」
彼女の気迫に怯みかけましたが、真実は真実なので私は強く肯きました。
「……それ、ヤバいわ」
「なんでだよ」
「だって××はさ、クラスの女子とファミレス行ってたもん。送別会兼女子会だって。だからその時間は、わたしたちと一緒にいたんだよ?」
私は言葉を失いました。そんな私を見て、彼女は言いました。
「ねえ〇〇。その人、誰なの?」
今でも私は、この恐怖体験を思い出す度に、背筋が凍ります。
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この体験をした本人は背筋の凍る思いをしたかもしれませんが、何となく悪い事ではないように感じました。やはり彼女が密かに想いを寄せていて、その強い想いがこの様な形で不思議な現象を起こした様に思います。
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