24歳 フリーライター 男性の心霊体験
大学の時、友だちと、地元で有名なちょっとした高さの山に登ることした際に経験した実際に体験した話です。
標高がさほどではないので、登山初心者でも楽しめる、いわゆる入門編的な山です。
夏休みを利用して、九月の平日に、レンタカーを借りてその山に向かいました。登山客の少ない日にちを確保できるというのは、大学生の特権ですね。
登山するのは、私を含めて三人。大学の時に知り合った友人で、気のいい奴らです。
勢いで道に迷い・・・
皆登山は初めてで、だから、とにかくテンションは上がりっぱなしでした。それがいけなかったのかもしれません。
私たちは、いつの間にか登山コースを外れ、鬱蒼とした林の中に迷い込んでいました。
今思えば、私たちは登山を侮っていたのでしょう。
初心者でも大丈夫という慢心が、こういう事態を招いたのです。
幸い、山自体の規模がそれほどでもなかったのと、遭難に気づくのが早かったのとで、三十分ほど歩き回ったところでなんとか、中腹の山小屋を見つけることができました。
その時は本当に、変な汗をだらだらかきましたし、恐怖体験とはまさにこういうことを言うのだと、実感したくもないのに思い知らされました。
いつもは気丈な友人が、
「おい、遺書を書く紙くらい持ってくればよかった」
なんてうろたえていたのには、流石に閉口させられましたが、それくらい追いつめられていたのです。
懲りずにワイワイしていたが・・
山小屋に着いてからは、安堵からまた懲りずに、常にハイテンションでした。
先程の失敗を早くも武勇伝に書き換え、三人で語り合いました。
食事は山小屋から少し離れた、洋風の建物で山菜うどんと自然薯のセットを楽しみ、もはやプチ遭難したことなんてきれいさっぱり忘れ、次はもっと高い山に登ってみよう、登山セットももう少しいいものを一式まるまる購入してみよう、と、未来に思いを馳せる余裕すらありました。
人間は、失敗を乗り越えた途端に、失敗したという事実すら忘れ去ってしまうようです。とにかく私たちは、遭難したことでむしろ有頂天でしたし、あるいは自信を上回る過信をも、抱いていたみたいです。
食事を終え、山小屋に戻ると、辺りはすっかり暗くなっていました。
秋の日は釣瓶落とし、そう思いながら、わたしは友人の「もうちょっと迷ってたら、絶対に出られなかったよなー」という他人事みたいな呟きを、聞くともなく聞いていました。
山小屋は民宿のような佇まいで、宿泊客は私たちの他にも二グループほどいました。
多分大学生です。「俺たちは遭難から生還したんだ」と、そもそも遭難する方が恥ずかしいのに、その時は気分が昂揚していて、妙に胸を張って堂々としていたことを覚えています。
敷かれた布団の数が・・・
部屋に入ると、すでに布団は敷かれていました。山小屋ではあるものの、サービスは旅館並みに行き届いていました。
そこでふと、私は違和感に気づきました。友人二人も「あれっ?」という顔つきです。
「布団の数、多いよな?」
「うん。一つ多い」
「間違った感じ? 女将さん(旅館らしさから、私たちはそう呼んでいたのです)に言った方がいいよな」
「ちょっと言ってくるよ」
私は部屋を出て、階段を下り、受付の女将さんにそのことを言いました。女将さんも首を傾げています。予約は「三人」でしたし、受付の時も確認したはずでしたから。
「バイトくんがちゃんと確認しなかったんだねえ」
そう言って女将さんは、布団を敷いたであろうバイトくんを呼びつけました。
バイトの男性は私たちと同じくらいの年齢で、バイト歴も短いそうです。
バイトが告げた衝撃の事実
一見聡明そうな見た目だったので、多少は戸惑いましたが、ミスくらいはするでしょう。笑って済ませようとすると、男性がぽつりと零しました。
「でも、部屋に入ったのは、確かに四人だったと思うんですけど……」
その瞬間、よく分からないけれど、悪寒が走りました。
「四人、ですか?」
「はい。男性三人と、赤いワンピースを着た女性一人と。珍しい組み合わせだな、なんて、失礼かもしれないですけど、そう思っていたので、印象に残っていて」
私は、高い高い上空から急速に落下するような、そんな気分になりました。
先程までの有頂天が、嘘のようでした。
あるいは、と私は考えました。
あるいは、先程の遭難で、私たちは「連れてきてしまったのではないか」と。
私は、友人たちにそのことを話し、女将さんには理由も告げずに、部屋を変えてもらいました。
それ以降私たちは一度も、山登りをしたことはありません。
山は遭難で亡くなった方や自殺で亡くなった方がたくさんいます。
私、龍も山登りが趣味ですが、下山中の午後4時に軽装で街歩きの格好で山に登ってゆく人をみて、この人はもしや・・・とドキドキした経験があります。亡くなっても見つからない方もたくさんいますし、山の怪奇現象の話はたくさん聞きますね。
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