43歳 専業主婦 女性 由侠さん 神奈川県横浜市で本当にあった怖い話
これは、私がまだ大学生であった20年ほど前、自宅の自分のベッドで二週間に渡り経験した実話の怖い話です。
これがいわゆる心霊体験であったのか、疲労などのストレスから来た生理現象なのか、それは私自身にもわかりません。
ただ一つ明確であることは、その経験が私にとって恐怖そのものであったことです。
始まりは嫌な気分になるただの夢
当時大学一年生であった私は、夏休みを控え特に問題のない毎日を楽しく過ごしていました。新しい生活にもすぐに慣れたし、早々とできた彼氏とも気が合っていて、本当にストレスになるようなことなど何もありませんでした。
しかし、そんなある晩私は嫌な夢を見て目を覚ましたのです。
起きてしまえば内容は一切覚えていない、けれどもやけにリアルな不快感が身体にベッタリと残る夢。
それでも、『不快な夢くらい誰だってたまには見るよ』と、私は深く考えることなく台所で水を一杯飲んで再び眠りにつきました。
思えば、これが10日に渡る心霊現象との戦いの始まりでした。
3日連続の悪夢と白いモヤ
最初に不快な夢を見てから2日、私は連続で嫌な夢を見ました。
初日の夢が内容のない『不快感だけが残る』夢であったのに対し、2日目以降ははっきりと内容を覚えています。
2日目、私は眠っている自分の姿を真上から眺めていました。そして、眠る自分の足元に何やら白いモヤが纏わりつくのを見て強い恐怖を覚え、『起きろ』と叫ぶのです。
天井から見ている私は懸命に叫んでいるのに、その声は水の中の声のように音にならず、眠る私に届きません。
(どうしよう。このままじゃヤバイ)
恐怖と焦燥に駆られる私をよそに、白いモヤは濃度を混して膨れ上がり――
ここで目が覚めました。
3日目もまったく同じ内容の夢を見ましたが、今度は天井からの『もう一人の自分』視点ではなく、ベッドに横たわった自分の『実体験視線』です。
自分の部屋の自分のベッドでいつものパジャマを着て眠っている、現実と寸分違わぬ姿。そのあまりのリアリティに、私の中で夢と現実の境が曖昧になり目覚めても強い恐怖が去らず、夏だというのに冷たい汗が流れたことを覚えています。
夜毎の金縛りと這い上がる白いモヤ
3日連続の悪夢と夏の暑さに、私の心身のエネルギーはハッキリと自覚できる程に削られていました。それでも、まだこの地点では『たかが夢じゃないか』という気持ちが私にはあり、さほど深刻に受け止めてはいませんでした。
しかし、決定的な出来事が4日目の夜に起きたのです。
昨夜と同じ白いモヤの夢を見ながら、『またか』と思う私。ここまでは昨夜と変わらない、むしろ二度目である分余裕すらあります。
けれども、白いモヤが膝辺りまで這い上がって来ると同時に、私は金縛りに襲われたのです!
金縛りにあっていたのは夢の中の私?現実の私?あるいは両方?
それは今もってわかりません。おそらくこの先も結論は出せないでしょう。
とにかく当時の私は、身動きが取れない状態で質量を増してゆく白いモヤを見ながら、ひたすら恐怖しパニックに陥りました。
動けないまま必死にもがこうと汗だくになり、ようやく目が覚める――覚めたと思ったら、また足元に白いモヤ。繰り返される金縛りと覚醒。もはや己が起きているの眠っているのかもわからないグチャグチャな精神状態、膨れ上がっていく恐怖。
私は完全に夢と現実の境を失い、気分はまさに『エルム街の悪夢』です。
この日以降まともな睡眠が取れなくなった私は、目に見えて顔色も悪くやつれていきました。まさか実話系怖い話を、自分自身がリアルに経験するハメになるとは思ってもみなかったのです。
彼氏のくれたクリスタル
金縛り開始から早4日。
自宅での安眠が出来ないどころか、私は自分のベッドで眠ることが恐怖でしかないところまで追い込まれていました。たかが夢、なれど夢。ここまで来たら、もう立派な健康被害です。
この時点で、日毎に大きくなる白いモヤは次第に人型を取り始め、足元からどんどん這い上がってきて下腹部辺りまで来ていました。
アレが顔まで来たら終わりだ。
なんの根拠もなく、しかし『漠然と』と表現するにはあまりに明確に私は確信していました。
悪夢に始まり金縛りに悩まされて一週間。心身の限界を感じた私は笑われるのを覚悟で己の窮状を彼に相談しました。
なんというか、当時付き合っていた彼はスピリチュアルな部分があったため、この手の話をしてもボチボチ真面目に聞いてくれるかなぁという期待があったのです。
彼は笑うこともなく、期待した以上に真剣に私の話を聞いた上で言いました。
『明日魔除けの水晶持ってきてやる。それを寝る部屋の四隅に貼りな』
思いがけない言葉でしたが、私の笑われても仕方のない話に誠実な態度を示してくれたことを、とても嬉しく感じたものです。
なす術なく諦めかけていた私に、『戦う意思』が芽生えた瞬間でもありました。
その夜も私は白いモヤに悩まされましたが、『やってやる。お前なんか、水晶もらったらやってやる』と、恐怖だけでない気持ちで向き合えたのがその証でしょう。
翌日、大学で水晶を手渡された私は帰宅後すぐに水晶を部屋の四隅に貼り、勇んで眠りにつきました。
反撃の狼煙は上がったのです。
その夜、私は白いモヤの『顔』を初めて確認できました。顔と言っても、目鼻口が何となくわかる程度なのですが、不思議と老婆であると確信しました。
恐ろしくなかったと言えば嘘になります。しかし、恐怖と同じだけの怒りと憎悪が湧きました。
『ぶっ殺してやる』
生まれて初めて、心霊的な何かに本気の殺意を抱きました。
そうして迎えた10日目、私は完全に殺る気でベッドに入りました。
以前彼にもらったアメジストの指輪をメリケンサック代わりに装着して。
その夜、やはり白い老婆は現れました。私の殺意に呼応するかのように、今までで一番ハッキリとした姿で。
むしろ、その方が殺りやすい。
私は奇妙に冷静でした。
老婆が這い上がるのを待ち、十分引きつける。そして、金縛り中でもそこだけは動く首を動かし左肩を思い切り噛んで覚醒。自由を取り戻した腕を動かし、指輪を嵌めた手で老婆の目玉を思い切り抉ってやりました。
『脳ミソぶち撒けてくたばりやがれ!』と強く念じながら。
翌朝、私の左肩には赤紫の歯型が残っていたものの、それ以降自宅で『白い老婆』に悩まされることはなくなりました。
私がまだ大倉山の実家で暮らしていた若かりし頃経験した実話です。
怖い話としてはありがちなネタかもしれませんが、実際に経験するとかなりきついことが良くわかりました。
ちなみに、ありがたいアメジストの指輪はうっかりゲーセンで格闘ゲームやる時に外したきり失くしてしまったのですが、もしかしたら役目を終えて私の元から去ったのかもしれません。
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