30歳 OL 女性 BAI-CHANさん
愛媛県伊予市にある、大谷池という地元ではとても有名な心霊スポットがあります。
血気盛んな暇を持て余した学生たちは、みんなこぞってそこに肝試しに行くのですが、私もその中の一人でした。
お盆に男友達と肝試しへ行くことに
8月のお盆の頃、夜友人宅に集まり男4人、女2人の計6人で映画を見ていたのですが、映画が見終わったところで男の子の一人が「肝試しに行こう」と言い出しました。
時期が時期ですし、私は怖がりなので気が進まず「えー」と言って反対しようとしたのですが、他の全員が行く気満々で準備を始めてしまったので、1人で家に帰る気にもなれず渋々同行することに決めました。
私を含め6人ともバイクや原付を所持していたので、それぞれ自分の愛車にまたがり出発。
私がのろのろと準備をしている間に目的地は決まっていたらしく、肝試しの定番「大谷池」へ向かい6人は走り出しました。
言い出しっぺの男友達が先頭に
先頭を切るのは言い出しっぺの男の子A男。
テンション高く夜の12時だというのに「ひゃっほー!」と大声で叫びだします。
この時の彼は、まさか生死にかかわる恐怖体験をすることになるなんて思いもよらなかったでしょう。
1時間ほど走り、ようやく池のある山のふもとに着きました。一度バイクを降り、どこまで行くかを決めることに。
池は山の上にあり上にはキャンプ場があるため、話し合いの結果キャンプ場まで行って戻ってくることになりました。
そこからキャンプ場までは多く見積もっても20分あれば行ける距離だったので、それだけなら大丈夫かな、と私もほっと一安心。
山道へ入ってから
ここから山道に入るので、走る順番を決めようという話になり、先頭は言い出しっぺのA男、続いてB男、C男、D子、私、E男、という順番に決めました。
怖がりの私は、最後尾に男の子をつけてくれたのがとても心強くありがたかったです。
走る順番も決まったので、いざバイクにまたがり山道へ。
登り始めると、真っ暗だし何の気配もないし急に空気が重くなった気がして、私はとても怖くなりました。
やっぱり家に帰っていればよかった、と後悔しながら走っていると、先頭を切って走っていた言い出しっぺのA男が急に減速したのです。
みんな不思議に思い、またバイクを停めました。
あんなにテンションが高かったA男がしゅんとして申し訳なさそうにしていたので、みんなで「どうしたの」と聞くと、「急に怖くなったから、先頭走りたくない」と。
他の男の子たちに少し馬鹿にされていましたが、私も怖い気持ちはわかるため走る順番を変更するように提案しました。
結果、そんな状況でも怖くないというB男とC男に先に行ってもらい、その次がA男、D子、私、E男という順番へ変更。
A男も安心した様子で列に戻りました。
A男がカーブを曲がらずそのまま・・・
順番が決まるとB男は「これで文句はないだろう!ついてこい!」と言ってバイクを急発進。
C男から後ろの私たちも慌てて愛車にまたがり後を追いかけました。
みるみるスピードを上げるB男。B男だけ原付ではなくバイクだったため差が開きます。
必死に付いて行くC男とA男。D子と私とE男は付いて行くのを半ばあきらめ、差もどんどん広がっていったのですが、何個目かのカーブに差し掛かった時、それは起こりました。
数十メートル先を走るA男が、カーブを曲がらずそのままガードレールに突っ込んでしまったのです。
幸いA男の原付はガードレールに引っかかり落ちなかったものの、A男はその先の崖にぽーんと飛んで行ってしまいました。
D子と私とE男はすぐに原付を停めて「A男!」と叫びました。
パニックになる私たち3人。
B男とC男は気付かずにとっくに先に行ってしまったようです。
「なんで突っ込んだの?!あいつ何やってんの?!」わけもわからず取り乱す私。
「わからない、全然曲がるそぶり見せなかった」わんわん泣き出すD子。
E男はA男の原付を車道の脇に持っていきエンジンを切りました。
崖の方を見ても真っ暗で、A男の声も聞こえません。
救急車を呼ぼうか、それより警察かも、それとも消防のレスキューを呼ぶべきか、3人であたふたして、手は震えるし涙は出て来るしどうしていいかわかりませんでした。
E男がB男とC男に電話して状況を説明し、とりあえず戻ってくるように伝えます。
突然、A男が戻ってきた
知らせを聞いた二人はすぐに戻ってきてくれました。
ひとまず探しに行ってみるから、とB男とC男。
もし10分経っても戻ってこなかったらすぐに警察に連絡するように、と言われ私とD子とE男はその場で待つことに。
B男とC男はガードレールをまたいで崖の方へ入っていきます。
その姿を見送って、私たち3人もガードレールの方を覗き込み携帯であたりを照らして見守っていました。
5分ほどたった時です。
急に後ろから「よかった、まだいてくれた」と声をかけられました。
振り返ってみると、そこにはちょっとだけ擦り傷を負ったA男の姿が。
そのA男を見てまた私たち3人はパニックになりました。
「どこから出てきた!?」
「生きててよかった!何があったの!?」
「なんで曲がりもせず突っ込んでいったの!?」
口々にA男を質問攻めにしますが、A男は「ハハ」と少し口元を緩めるだけ。
崖に落ちたにしては軽傷な見た目に安堵しつつ、真っ青な顔をして少し震えているA男の姿は怯えているように見えます。
A男の恐怖の体験とは?
A男を探しに行ったB男とC男を呼び戻し、感動の再会を果たしたところで、ようやくA男から事の詳細を聞くことができました。
B男とC男の後を必死に追っていたけれど、もう追いつけないかも、とA男も半分あきらめていたとのこと。
もう追いつけないかなーと思いながらカーブを曲がろうとしたところで、自分のハンドルが曲がらないことに気付いたそうです。
はっとしてハンドルを握る自分の手を見ると、そこには、向かい側から自分の手を掴み曲がれないようにしている女の人の霊がいた、と。
そこまで話を聞いた私たちは、蜘蛛の子を散らすように一目散に下山しました。
下山してからまた友人宅へ集まり、A男を慰めつつどうやって戻ってきたのか聞くと、
崖に落ちた拍子に携帯もなくして、真っ暗だし怖いしがむしゃらによじ登って走って突き進んだら知らない間に道に戻れていたそうです。
その後、私たちは何かあっては困るから、ときちんとお祓いへ行きました。A男は今でも元気に生活しています。
その恐怖体験以来、私たちは肝試しを封印しました。その時の話もその後一切していません。
A男の手を掴んだ女性の霊は何が目的だったのでしょうか。ちょっとしたいたずらとか?
聞くだけだと怖いと思いますが、私はA男を無事に帰してくれたことに少し感謝しています。
携帯を届けたのは霊?
余談ですが、A男がなくした携帯は、後日ちゃんと戻ってきました。
交番に届けられたそうですが、届けてくれたのは女性だったとか。
警察の方が聞いても名前も住所も言わず「大谷池で拾った」とだけ言って置いて行ったそうです。
A男の見た女の人の霊と関係があるかどうかはわかりません。
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