37歳 自営業 女性 まさみさん 埼玉県秩父市で本当にあった怖い話
これは私の妹が体験した実話の怖い話です。今も家族で集まると度々話題に上り、「あれは何だったんだろうね」と不思議がっています。
埼玉県の有名心霊スポット、秩父湖に架かる吊り橋で肝試し
当時私の妹は大学生でした。
大学一年の夏休み、怖い話が好きなサークル仲間たちと示し合わせて埼玉県の心霊スポットに向かいました。
目的地は稲川淳二の怖い話で有名な秩父湖に架かる吊り橋で、恋人に裏切られた女性が投身自殺したと言われています。
メンバーの一人の車に乗り込んで道路を走ること数時間、到着時にはすっかり夜が更けて不気味な雰囲気が漂っていました。
車から下りて夜道を歩いている時、妹は謎の悪寒に襲われたそうです。
「ねえ、寒くないここ?」
「別に……普通だよな?」
鳥肌立った二の腕を擦って先頭の男性陣に聞いても笑われるだけで、内気な妹はそれ以上の反論を諦めました。
思えばこの時に引き返していれば、あんな恐ろしい目にあわずにすんだのですが……。
暗闇に浮かび上がる吊り橋と白い女の影
サークル仲間たちと他愛ないお喋りをしながら進んでいると、じきに渓谷にかかる吊り橋が見えてきました。周囲には人工の灯もなく、底冷えするような暗闇が口を開けて待っています。
「怖っ、すごい雰囲気あるね~」
女友達の一人が笑って吊り橋に近付いていくのと対照的に、妹は身体が竦んで動けなくなりました。
この吊り橋は絶対やばい、誰かが、いや何かがいる……そう直感したのです。
仲間たちがスマホを掲げてあちこち撮影している最中、妹は離れた場所で突っ立っていました。
しかし……
「っ!?」
吊り橋の中央で掲げ自撮りしている青年の後ろに、ぼんやりと白い影が浮かび上がりました。妹の目には髪の長い女性に見えました。
連鎖する恐怖、軋む吊り橋
青年は背後にたたずむ幽霊の存在に気付かず、呑気にシャッターを押しています。
遂に耐えきれなくなり、妹は青年の背後を指さしました。
「後ろにいる!」
次の瞬間いやに冷たい風が吹き抜けて周囲の木々が一斉に鳴り、吊り橋が不吉に軋みました。
「きゃああああっ!」
続いて悲鳴を上げたのは女友達です。とうとう他のメンバーも幽霊を目撃したのです。
逃げる一行、転んだ妹に迫る恐怖
人間は本当に恐ろしい時無言で逃げ出します。妹たちもそうでした。皆一様に口を噤んだまま、先を競って走り出します。
ところが……運動音痴な妹は途中で転んでしまい、あっというまに薄情なサークル仲間においていかれてしまいました。
「待ってよ、連れてって!」
虚しく手を伸ばして叫ぶ妹の後方で空気が動き、何かが接近してきました。
その何かは妹の背中にのしかかり、長い髪をたらして囁きました。
「ここじゃない……」
「いやっ、お願い助けて!」
意味不明な幽霊の発言に取り乱し、無我夢中で両手を振り回している時にスマホのシャッターを押しました。
フラッシュが焚かれた直後フッと意識が遠のき、妹の視界は真っ暗な闇に飲み込まれていきました。
「ここじゃない」の本当の意味
「大丈夫か、しっかりしろ!」
「車に戻るぞ!」
どれ位経った頃でしょうか。車まで辿り着き、漸く妹がいないことに気付いた皆が戻ってきました。
サークル仲間に引きずられて車内に休んでいる時、妹は先ほどの体験を話し、証拠としてスマホの画像を提示しました。
妹が偶然撮った画像には白っぽい影が見切れており、それは若い女性に見えました。
「ここじゃないって言ってた……」
放心状態の妹が呟いた所、メンバーの一人が気まずそうに口を開きました。
「実は下流に別の橋がかかってて、そっちが本当の自殺現場じゃないかって噂があるんだ」
「え……」
思いがけない形で真実を知った妹は絶句しました。
以上が妹の心霊体験です。今思い出しても怖い話ですが……女性の幽霊は自分が死んだ場所はここじゃないと伝えに出てきたのでしょうか?