33歳 工場勤務 男性 バルバルサンさん 岐阜県で本当にあった怖い話
これは、年齢はよく覚えていませんが、多分僕が十歳になるかならないかの頃に体験した話です。
詳しい時間帯は覚えていませんが、記憶の中の周囲の暗さなどから考えて、夜、それも深夜の事だったと思います。
記憶の中で僕が目を覚ますと、車の中、後部座席に寝ころがっていました。
埃っぽくて、父の良く吸っていたタバコの匂いが鼻につく、何らいつもと変わらない車の中。
ただし、車の外が真っ暗な時間帯だという事を除けば。
暗い車内は何とも言えない不気味さで、車の前面の窓から入ってくる、街灯か月明かりかわからない薄暗い明かりが一層気味悪さをあおってきました。
そして、そのままぼーっとした頭のまま後部座席の窓の外を見て、僕は震えあがりました。
僕が寝転がっていた車は車庫に入っていて、車庫の中には色んな農機具だとか、農薬だとか……まあ、農業用の物が雑多に置いてあったのですが、車の後ろは相当暗くて、その時はそれらは見えませんでした。
しかし、外が暗いので窓はよく僕の顔を映していました。
それだけでも、怖がりだった当時の僕は相当に怖かったのですが、その窓に映ったぼうっとした僕の顔が、にやりと不気味に笑ったではありませんか。
それがもう、怖くて怖くて……たまらず叫ぶのも忘れて、車内から逃げて家に走ったのだと思います。ただ、そこら辺の記憶はあいまいです。はっきり覚えてるのは、笑顔と、叫ばなかったことくらいかな?
まあ、今こうして文章を打っているので、無事帰って、無事に寝て、無事に朝を迎えたのでしょう。
田舎で、家から車庫まではやや離れているので夜道を走り、親が寝静まった家へと戻り、そのまま寝た……のかな?
正直、車内で見た笑顔が怖すぎて、他の細かいことは覚えていません。
さて、10代後半までこの記憶は、幼少の恐怖の記憶の一つとして僕の中で中々整理が付けられなかったのですが、中学校から高校に上がるにかけて、「ああ、あの時はなんか窓の反射のせいで、にやりと自分が笑ったように見えたのだろう」と、なんとか整理をつけました。
とはいえ、整理が付けられるまで僕の中でこの記憶は相当な恐怖であり、小学生の頃、鏡のような自分の顔を映す物が見られませんでした。
また、鏡に映った僕が笑いかけてきたら嫌ですし。
しかし、それでも整理できない謎が一つ残ってしまって、なんとも気味の悪い思いを今まで抱いています。
何故、当時の僕は暗い車庫の車の中に寝ころがっていたのでしょう?
僕の両親は、そんな風に寝ている子供を車内においてどこかに行くような人ではなく、また僕も、怖いものは大嫌いなのでそんなところに一人いるわけは無く。
なぜ、当時そんな怖い場所にいたのか?
その答えが、今も見つかりません。
夢と断じるには、あまりにもあの笑顔は生々しく記憶に残っていますし。
現実だと断じるには、その笑顔を見た記憶の状況が異様に感じます。
答えなど出さなくても良いですが、やはり気になる物で。
僕は、何故あの時に車内にいたのだろう?
今も、悩んでいます。