37歳 主婦 女性 あいこさん 東京都八王子市城山八王子城址で本当にあった怖い話
これは現在30代の私が高校生の時に地元八王子で実際に体験した怖い話です。
なかなか衝撃的な心霊体験なので、友人知人にも実話だと信じてもらいにくいのですが本当にあったことだと前置きします。
当時私は東京都八王子市に住んでいました。
近所には都内最大の心霊スポットともいわれる八王子城址があり、小学校の頃から何度も遠足で赴いた経験があります。
この城山は戦国時代の凄惨な合戦場でもあり、今でもたくさんの幽霊が出ると言われています。
城山に出没する幽霊は敵兵に辱められるのを拒んで自害した婦女子や、城を守れず命を落とした武者だそうです。
当然ながら遠足は昼に行われるので、夜の城山に足を踏み入れた事はありません。
高校のクラスメイトと肝試しへ
高1の夏休み、クラスメイトたちとひと夏の思い出作りをしようと盛り上がり、肝試しをすることになりました。
そこで選ばれたのが城山です。
友人で自称霊感持ちのA子が道中城山の血塗られた歴史を話すなどした為、皆テンションが上がっていました。
正直私は怖い話が苦手だったのか、空気の読めない子と思われるのが嫌々で渋々同行しました。
「わ~雰囲気あるね~」
先頭を歩くA子の歓声に顔を上げると、夕闇迫る城山が不気味に聳えていました。
その時私は最後尾を歩いていたのですが、ふと嫌な視線を感じました。
城山に入るのを歓迎してない誰かが牽制しているような悪寒が駆け抜け、ここに来たことを後悔したものの、A子たちはまるで構わず行ってしまいました。
「待ってよ!」
おいてかれないように慌てて走り出した私の耳に、葉擦れに紛れそうな幻聴が届きました。
具体的に何と言ってるかまでは聞き取れませんでしたが、呪詛と怨嗟が渦巻く男の人の声に思えました。
本当に幽霊がいるのではないかと思うと、心臓が早鐘を打ち始めました。
誰かが見ている……異様な雰囲気に呑まれて立ち止まると
時間は午後7時を過ぎていました。
先頭のA子に続くクラスメイトは3人、最後尾の私を含んだ総勢4人で縦一列に山道を歩きます。
私は山に入る直前に聞いた幻聴が忘れられず、不吉な胸騒ぎに駆られていました。
「何もでないね、拍子抜け」
A子が落胆してため息を吐くと同時にガシャ、ガシャと金属音が響いてきました。遠くからだんだん近付いてくるその音は、落ち武者の甲冑が鳴っているようにも聞こえます。
「ねえ、みんなにも聞こえたよね?」
しどろもどろにクラスメイトたちに確認しますが、皆は一様に怪訝な顔をしています。
そして遂に最大の恐怖が私たちを襲ったのでした。
落ち武者の足音に取り囲まれて
「きゃあああああっ!」
A子が鋭い悲鳴を上げて正面を指さしました。行く手の森の中で複数の人影が蠢いています。よくよく目を凝らすと、それは髷をざんばらに乱して落ち武者の幽霊でした。
がしゃん、がしゃん、がしゃん……。
夜の闇の中に甲冑の音を響かせ、落ち武者の霊は延々回っていました。私たちは幽霊に包囲されて孤立し、逃げ場がありません。
ハッキリ姿形が見えるもの、声や音だけが聞こえるものにクラスメイトたちは分かれましたが、私は運悪く前者に属していました。
「に、逃げよ!」
「うん!」
A子の第一声に鞭打たれ、私たちは一斉に引き返しました。
ところが、まだ終わりではなかったのです。
追いかけてくる落ち武者と前途多難な下山
私たちは懐中電灯で山道を照らして必死に逃げました。しかしあたりは暗く、背後からは落ち武者の足音が追いかけてきます。
A子は完全にパニックに陥って泣きじゃくり、他のクラスメイトたちもヒステリックに喚いていました。
クラスで一番足が遅い私は必然的に逃げ遅れ、落ち武者の足音が後ろに迫ってきます。
もし捕まってしまったらどうなるのか想像すると、全身の毛穴が開いて冷や汗が噴き出しました。
「ごめんなさい、許してください!もう二度と肝試しなんてしません!」
ひたすら足を繰り出しながら許しを乞えば、うなじのあたりに冷たい息を吹きかけられました。
「入山を禁ず」
それは山に入る前に聞いた男と同じ声でした。
数十分後、どうにか私たちは麓の道に辿り着いて無事家に帰ることができました。
大人になってから振り返ると馬鹿な事をしたものだとあきれます。
この時の強烈な心霊体験は心に焼き付き、今でもたびたび悪夢にうなされるのでした。
私が聞いたのは落ち武者の霊の声だったのでしょうか。山に入ったら恐ろしい目にあうと警告してくれたのなら、それを破った私たちが報いを受けるのは自業自得だと反省しています。