37歳 主婦 女性 ななえさん 東京都八王子市で本当にあった怖い話
これは現在37歳の主婦の私が友人のK子から聞いた怖い話です。
この話をする際、K子は「実話だと信じてもらえないかもしれないけと……」と自信がなさそうにしていました。
団地で飛び下り自殺した女の幽霊の目撃談
当時K子は東京都八王子市の老朽化が進んだ団地に両親、弟とともに住んでいました。
ある時、その団地で飛び下り自殺が発生しました。亡くなったのは50代の女性で、旦那さんに逃げられたのが原因で心を病んでしまったのだそうです。噂では統合失調症で薬が手放せなかったらしく、近所の人たちは同情していました。
K子も故人と面識はかったのですが、親から話を聞かされて子供心に可哀想に思い、彼女が飛び下りた踊り場に公園で詰んだ花を供えにいったそうです。
ところが、この判断が誤りでした。
K子が踊り場に花を供えて手を合わせていると、どこからか冷たい風が吹き抜けてサッと影がさしたのだそうです。
不思議に思って見上げた空は明るく晴れ渡り、視界を遮る雲などないにもかかわらず……。
花を供えた夜から夢枕に立ち続ける女
K子が踊り場に花を供えた夜、彼女が部屋に布団を敷いて寝ていると枕元に女が立ちました。
年の頃は五十代半ば、とても哀しそうな目をしてK子を覗き込んでいます。
K子は金縛りに遭って身動きできず、隣で熟睡している弟に助けを求める事もできません。
(お願い、どっかいって!)
K子が狂おしく念じ続けていると、やがて女は消えてしまいました。
ホッとしたのも束の間、翌日もその翌日も女はK子の枕元を訪れ、黙って立っているのです。
自分は幽霊に取り憑かれてしまったのではないかとK子は悩み、寝不足から体調を崩しました。
そうしている間にも幽霊の行動はエスカレートし、布団に入ったK子の足を掴み、引きずり出そうと企てるまでになりました。
両親に理由を話すとお寺に連れていかれて
そんな娘の様子を案じた母親に問い詰められ、K子は毎晩訪ねてくる女の幽霊の事、踊り場に花を供えた事を白状します。
K子の両親は話し合いの末、娘を近くのお寺に連れて行ってお祓いを頼みました。
すると住職はK子の背後を見透かすように目を細めて言いました。
「ああいけない、お嬢さんは自殺者を哀れんだね。彼女は君を自分の子どもだと勘違いしてるよ」
住職の意外な発言にK子と両親は絶句しました。
そして明らかになる幽霊の哀しい身の上
これはK子の母親がのちに主婦仲間から聞いて判明した事実ですが、踊り場から飛び下りた女性には、十代で産んで手放した娘がいました。
娘の行方は結局わからずじまいで、女性はその事をずっと悔やんでいたそうです。
「心優しいお嬢さんを娘と思い込んで、一緒に連れていこうとしたんだろうね」
住職のお祓いの結果K子が幽霊を見る事はなくなりました。この心霊体験がトラウマとなり、以来K子は踊り場を避け続けます。
そして現在、一児の母になったK子は「ただの怖い話じゃなくて哀しい話よ。彼女の気持ちが漸くわかった」としんみり振り返るのでした。
余談ですがK子一家が住んでいた団地には生活保護をもらっている低所得層が多く、自殺や孤独死が後を絶たないため、この手の実話に事欠かないそうです。